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静岡映画館物語

   

発刊にあたって

百年に一度という経済危機だという。時の流れがあまりに急ぎすぎている。物の流れに心が追いついていかない。それを何かおかしいぞと思う感性も想像力も失ってきている。

私は百年に一度という危機を、そんなにネガティブにとらえてははいない。ようやく物質的な物から精神的な心の時代に入ってきたなと思っている。先に“儲けて何故いけない”“金があれば何でも手に入る”という主張がごく当たり前のようになされ、不自然なことだと思わないような感性の劣化が進行してきている。幸福さえも金で手に入ると思っているような風潮が蔓延さえしていた。

時代は二十一世紀に入って、ようやくにして人間的なものに向かい始めたようだ。物が心より優先される時代は明らかに異常だ。

「映画館」という空間の中で過ごすことが出来た六十年は本当に楽しかった。特に多感な青春期の数年間は、「映画館」にすべてが凝縮されていたほどに濃密だった。青春のすべてでもあった。そして私は映画興行という仕事につき、四十二年間、「映画館」で過ごすことが出来た。

このように「映画館」が私にくれた幸福をボギーのセリフではないが“君の瞳に乾杯”と感謝を捧げたい。

静岡市は中心部に映画館が十三スクリーンもある全国でも稀な街だ。映画館の最盛期の昭和三十三年には二十七スクリーンを数えた。時代の流れは当然、固定せず変化する。変化は必ずしも温故知新を促すことはしない。静岡の「映画館」もいつかは時代の変化の波に呑み込まれていくだろう。

今回、静岡市における映画文化の歩んだ道と意義を興行側と観客側の双方からのアプローチにより回顧し、映画の明日への夢と希望を描きたいと考え「静岡映画館物語」の発刊を企画した。

明治から大正・昭和・平成と続く映画館の記憶を記録して留めておこう。これが中心コンセプトである。

資料篇として戦後、昭和二十七年から昭和六十三年までの上映作品リストは可能な限り網羅してある。これは全国的にみても初めての試みであると思う。タイトル表示に関してはフィルムに表示されたものを基本とした。

この本の編集には各世代の人たちから多くの映画館にまつわる思い出の寄稿をいただいた。映画が人の心に与える影響の大きさを改めて認識した。「映画館」のスクリーンに映された映画を観た想いがそれぞれ熱く綴られている。静岡の映画文化は「映画館」から生まれて来たことがよく解る。

この本が、皆さんの心に「映画館」の思い出を呼び起こすきっかけとなれば、編集者としてこれ以上の喜びはありません。

何分にも限られた時間の中での製作の不足した部分、補足しなければならないところが多くあることは承知しています。ご容赦とご理解をお願い申し上げる次第です。

「静岡映画館物語」編集委員会 代表  斉藤 隆

 

 

「静岡映画館物語」は「わが青春のスクリーン」と題し平成21年3月5日発刊、総頁数350頁、定価3800円。

当ホームページの「七間町物語」のコンテンツの中で、映画館に関する解説、記述はこの書籍から引用されているものが多数あります。編集者承認の上での引用ですのでご了承ください。

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