静活会館

静活会館は昭和三十二年六月二十五日に開館した。 昭和三十年に日映が昭和通り角に「静岡東映劇場」「静岡映宝劇場」を開館させていたので、昭和通りをはさんだ協和マーケットの隣に五階建の偉容を誇る東海随一の総合劇場を開館させた。正面が客席一一九三、松竹映画封切の「静岡松竹劇場」、地階に洋画封切の「静岡有楽座」の映画館だ。静活会館の正面には日本一を誇る大壁画を設けた。モザイク・タイル張りの名画「グランド・ジャット島の日曜日の午後」と言われる点描画法で知られるスーラの代表作だ。壁画をタイルにして、点描画のスーラのこの題材を選択したのは実に炯眼だ。余裕を持った贅沢なロビー空間、広いホール、実演もできるような大きなステージを持ち、舞台裏には楽器部屋を始め風呂までも設置されていた。映画と実演の殿堂に相応しい非日常がこらされていた。「有楽座」のロビーにも大きなステンドグラスにポール・クレーの名画「船乗りシンドバット」が描かれていた。洋風館らしいオシャレなディスプレイがあちこちにセットされていた。静活会館の完成記念には三日間にわたり松竹のスターが大挙来演した。静活会館はまさに映画と実演の殿堂として静岡の文化的な社交場としてファンの夢とロマンを満たしていた。

昭和34年(1959年)撮影。平成23年(2011年)10月、静活のセノバ移転に伴い惜しまれながら閉館した。