オリオン座は戦後、静岡が生んだ最大級の映画館だ。昭和二十六年十二月三十一日に七間町に開館した。現在の青葉交番前の巨大な時間貸し駐車場がその敷地である。東海道随一、世紀の映画殿堂の惹句は決して大げさなものではなかった。三階建ての総合レジャービルで映画館の他に、レストラン、喫茶店、クラブ、美容院、事務所などが複合していた。ロビーの吹き抜けにはシャンデリア。二階席が特別席として設けられ、二階席への曲線を持った階段。その壁には日展特選の日本画家、白鳥映雪の「立秋」が飾られ、ロビーの中央には杉本宗一の「花と人」の大彫刻の立像が置かれていた。新鋭作家の油絵、水彩画が多数ロビーや廊下に飾られオシャレな雰囲気をつくっていた。
ビル正面には大きな壁画が描かれ、その中央にLIVE TODAYの文字があった。いまを生きるという意味だろうがこんな言葉をデザインするセンスには感心させられる。映画「ダラス」をオープニングにして昭和四十六年の「栄光のル・マン」をエンディングとして合計八九六本の映画を上映して移転した。七間町の現オリオン座では八九七本目の「夕日の挽歌」が記念すべき移転後の第一作だった。
旧オリオン座の館内の様子である。文中の通り、吹き抜けのロビーと美しいシャンデリア、そして大彫刻である。下の写真はステージである。女性が一人立っているが大スクリーンと客席前部の様子が見て取れる。